屋外の騒音対策。 脱着型防音ボックスで機械音をカット
これまでの事例紹介では、工場や倉庫など屋内での防音対策についてお話をしてきました。
しかし、防音を必要とする環境は屋外の現場にも存在します。
今回は、屋外における機械音の騒音対策について、一例をご紹介します。
【ご依頼】 住宅が隣接する屋外の現場。コンプレッサーが発する機械音の騒音対策
今回の騒音対策に対するご依頼は、住宅や線路に囲まれた屋外の現場。
K社様では既に防音パネルで騒音対策をしていましたが、さらに減音できないかというご依頼でした。
騒音の元は2台のコンプレッサーで、稼働すると音の中で最も減音が難しい低音域の音を発するのが課題でした。
【施工の課題】 換気口の必要性のほか、平ではない設置場所や風雨への対応など屋外ならではの課題も
コンプレッサーの騒音対策として脱着型の防音ボックスを製作することになりましたが、施工に際して工場や倉庫とは異なる屋外特有の課題がありました。
●課題1 フラットではない設置場所への対応
コンプレッサーが置かれている場所は砂利敷き。
その上に設置する防音ボックスは風雨で動かないように安全策を講じる必要がありました。
屋内のフラットな場所では脱着型防音ボックスを覆い被せる形で対応しますが、
今回は防音ボックスの下部に金具を取り付け、地面に固定できるように設計。
風雨に耐えられるようにしました。
●課題2 排気のための開口部
コンプレッサーが稼働すると排ガスが出るため、防音ボックスに排気口を設ける必要がありました。
開口部があるということは、そこから当然騒音が漏れ出ます。
そのため開口部の大きさをどの程度に留めるか、防音ボックスを設計する上で問題になりました。
排気口の解決策として、防音ボックスの上部に開閉できる換気用の扉を設ける仕様としました。
次の問題はこの換気扉の角度です。
フルオープンにすれば換気量は確保できますが、一方で音漏れのリスクが増します。
換気扉の向きは騒音の苦情が出にくい線路側に向かって開口することにしましたが、
今度は線路の法面に高さがあるため、排気扉の角度が小さいと線路の法面に音が反射するという問題が浮かびました。
音漏れリスクの許容範囲と換気量のバランスが取れる角度(この場合45度)を算定し、換気扉を支えるアームがその角度で開くように設計しました。
防音ボックスにはさらに、コンプレッサーのスイッチ類を外部から操作できるように、該当の箇所に小窓を設けて日々の利便性を確保。
小窓には樹脂製の防音シートをすだれ状に加工して取り付けることで、音漏れリスクに配慮しました。
●課題3 防音パネルの屋外における耐久性
風雨や紫外線にさらされる屋外においては、防音ボックスの耐久性も考慮しなければなりません。
プラスチック材の防音パネルは軽量かつ吸音性に優れ、比較的安価であることが魅力ではありますが、屋外の厳しい環境下での経年劣化が憂慮されます。
今回のご依頼は、2年後に解体予定という期間限定であることから耐用上問題ないと考え、コストパフォーマンスに優れたプラスチック材の防音パネルを採用しました。
【施工後の防音効果】 減音が難しい低音域をカットでき、騒音対策に成功
ダイワ工業では騒音の程度を可視化できるサウンドグラフィーを導入しています。
防音ボックスを設置後に騒音レベルを測定したところ、低音域でこれまで48dBだったのが施工後は40dBと、8dBの減音に成功。
騒音元であったコンプレッサーの音よりも、コンプレッサーを冷却するために設置された冷風機の音の方が大きく感じられるという結果になりました。
K社のご担当者様も音が非常に小さくなったと体感され、ご満足いただきました。
屋外に設置された機械の騒音に悩まれている方は、ぜひご相談ください。
鉄骨のプロであり、経験豊富な一級建築士がいるダイワ工業だからこそできる現場の状況に合わせた防音対策をご提案いたします。
防音工事情報
施工内容:脱着式防音ボックス
施主:K社様
所在地:非公開
規模:幅約2m×奥行約3m×高さ約2m(2台)
取り付け工事日数:約1日/1台、調整1日、合計3日 ※企画立案等は含まれません。